メラトニンとビタミンC

昨日のブログで、血中メラトニン濃度が高い年代(小児~若年者)ほど、covid19の致死率(罹患率)が低いことに触れた。

画像1


しかし、このグラフを見て疑問に思われるかもしれない。
「メラトニンにcovid19の予防作用があるとすれば、上記グラフに見られるようにメラトニン血中濃度の低い乳幼児では、致死率も高いのではないか?」
これに関しては中国の研究があって、covid19に罹患した乳幼児(生後1年以内)では重篤な症状が見られないことがわかっている。なぜだろうか?
この秘密は、一酸化窒素にある。
鼻腔では一酸化窒素が産生されており、これが細菌やウイルスに対する防御系の一端を担っている。新生児では副鼻腔内の一酸化窒素濃度が高く、成人とほぼ同じ濃度である。敗血症にしたネズミの実験によると、一酸化窒素にはNLRP3インフラマソーム(炎症物質)の活性を抑制する作用が示されている。
乳幼児がメラトニン濃度が低いにも関わらず新型コロナにかかりにくい(かかっても症状が重篤化しにくい)のは、鼻腔内の一酸化窒素による抗炎症作用のおかげだと考えられる。

さらにいうと、ビタミンCが感染症に効くことは有名だが、この機序にも一酸化窒素が関係している。
ビタミンCは一酸化窒素の産生を促進し、NLRP3インフラマソームの抑制に貢献する。さらに、酸化ストレスの軽減、低酸素シグナルの調整、ミトコンドリア膜電位の安定化、フーリンタンパクの発現、免疫系の適正化によって、サイトカインストームを抑制する。
ビタミンCが用量依存性に(つまり、ビタミンCをたくさん摂れば摂るほど)NLRP3インフラマソームを抑制することはin vitro(試験管内)でもin vivo(生体内)でも確認されている。これによって、IL-1βの分泌が減少し、結果、細胞に毒性のある物質が産生されず、細胞死が起こらない。

以上のことから、covid19患者の治療として最も有効と思われるのは、メラトニンとビタミンCの併用である。
この治療は、以下に述べるように、心血管系疾患や高血圧が背景にある患者で特に有効だと思われる。

マクロファージの内部に形成されたインフラマソームは、肺の炎症を悪化させる。ここで有効なのはメラトニンである。メラトニンはIL‐1βの分泌を減少させ、インフラマソームによる血管障害を軽減する。これは主にメラトニンによる内皮漏出の改善作用やNLRP3インフラマソームの抑制作用によるものである。心血管系疾患が背景にある患者がcovid19の治療に際してメラトニンが有益な理由はここにある。

セレンはフリーラジカルの強力なスカベンジャー(掃除屋)である。セレンは、ウイルス(エボラ、HIV、インフルエンザA)に対する有効性が確認されている。
一方、セレンはアンギオテンシン変換酵素(ACE)を強力に阻害する可能性が示唆されている。心血管系疾患、高血圧、糖尿病の患者ではACE阻害薬あるいはアンギオテンシン2受容体阻害薬(ARB)を服用していることが多いものである。いずれの薬も、ACE2の発現を増加させる。

従って、covid19感染者がセレンを飲むと、問題が起こり得る。
ACE阻害薬は、ACE2受容体の発現を増加させる(リガンドの働きが阻害されると、受容体が数を増やして対応しようとするのは、薬理学ではよくある現象である)。
しかし新型コロナウイルスが宿主細胞に感染するのは、ACE2受容体への結合を通じてなのである。ACE阻害薬あるいはセレンの服用によって体内(ACE2受容体は肺上皮細胞、腸、腎臓、血管に多く存在する)のACE2受容体が増加していては、covid19感染のリスクや、感染後の重篤な合併症の発生率を高めることになる。

なるほど、covid19の感染者の多くは死亡することなく回復していることは確かである。
しかし、新型コロナウイルスはACE2受容体に結合するため、心血管系疾患のある患者やACEの働きを阻害する物質を服用している人では、注意が必要である。

上記の内容は、以下のサイトを参考にしました。
“COVID-19, PNEUMONIA & INFLAMMASOMES – THE MELATONIN CONNECTION”

しかし個人的にショックなのは、セレンは新型コロナの罹患率を高めるのではないか、という指摘だ。
セレン(100 μg/日)の服用はオーソモレキュラー医学会も推奨しているところなのに´Д`
セレンがまったくダメというわけではなく、有効なウイルス(エボラ、HIV、インフルエンザA)もある。しかし、新型コロナには有効どころか有害である可能性があるというのだから、聞捨てならない話だ。

ただ、オーソモレキュラー学会の提唱する新型コロナ感染予防をきちんと実践している人は、ビタミンCやD、亜鉛も服用しているはずだから、たとえセレンが有害であったとしても、そのマイナスを補って余りあるだけの効果は他のサプリから得られているはずだから、心配することはないと思う。
未曾有の事態だから、情報はどうしても錯綜しがちだけど、あまり過度に神経質にならず、冷静に対応したいところだ。

タイトルとURLをコピーしました