糖質制限

「私、糖質制限こそ最高の健康法だと思っていたんですね。ご多分に漏れず、私もちゃっかりブームに乗せられました。私の失敗談です。聞いてください。
2018年8月に糖質制限とプロテインを始め、最初数か月は調子がいいように感じました。1年ほど経った頃、少しずつ夕方に疲れが出るようになりました。太ったわけではないけどお腹だけ肉がついてきたし、生理も乱れがちになって。もともと甲状腺機能の低下を指摘されていたのですが、数字も段々悪くなって。リウマチの痛みも悪化してきたし、眠っていても中途覚醒が激しいし、起きていてもイライラして、けんかっ早くなるし。
何かおかしい、と思っていました。掲示板やSNSを見ると、私と同じような異変を感じている人がいましたが、信者みたいな人から『あなたのやり方が悪い!』と叱られている始末。

過去の採血データを見ながら、自分なりに考え始めました。そこに、安保徹先生の自律神経と好中球、リンパ球の話、崎谷博征先生の胸腺の話がリンクして、『まさか、糖質制限の悪影響!?』ということに思い当たりました。
『糖は悪だ!』『糖のせいでみんな病気になるんだ!』有名な先生が音頭をとって、信者がそれに付き従って。2018年、2019年頃のツイッター界隈は本当にひどかった。EAAの健康被害とか、まぁ荒れに荒れてましたね。
考えてみれば中村先生は最初から『糖質制限、やりすぎないで下さいね』って言ってましたね。『小麦は控えめに。お米は適量ならいいですよ』って。無視してたのは私のほうでしたね。すいません。
糖質制限を始めた当初、痛みがなくなったと思ったのは、単なる免疫抑制の結果に過ぎません。リウマチはリンパ球が減る病気なのに、糖質制限なんかしたら胸腺に余計にダメージを与えてしまう。
糖質制限でグルコース供給が減少するから、肝臓が頑張ってグルコースを産生する。糖新生ですね。そのとき、筋骨格系からタンパク質が切り出されて材料として使われるんですが、そのとき、大量のエネルギーが消費される。エネルギーが発生すれば活性酸素も発生する。
『生理が止まった』『脂肪肝になった』『肌の色つやがなくなってきた』
SNS上には、糖質制限の悪影響をモロに受けた人たちの生の声がありました。が、一方でこうした声を批判する信者の勢力も根強く、実に混沌としていました。

私は、ちょうど一年前、2019年の秋頃に糖質制限の誤りに気付きました。これではいけないと思って、おそるおそる、ご飯を少しずつ食べ始めました。関節の痛みをこらえつつ、とりあえず一日一膳はご飯を食べるようにして、あと果物や生のハチミツをちょとずつ食べたり。
そうすると、少しずつ関節の痛みが和らいできた。『糖新生するから糖は要らない、じゃない。わざわざ肝臓が糖新生しなきゃいけないほど、糖は体に不可欠なんだ』こんな簡単なことを理解するのに、一年かかってしまいました。でも私には必要な回り道だったと思います。
様々な体調不良が改善し始めました。
以前、私、中村先生のところでビタミンC点滴したこと、覚えてますか?手の甲に謎の赤い湿疹があって、それがよくなればと思って点滴したんですけど、正直、全然よくなりませんでした(すいません)。でもハチミツをとりはじめてから一週間でよくなりました。

高槻の松本仁幸先生、膠原病を免疫抑制剤を使わずに治療されてる人ですが、この先生も糖質制限は論外って言ってます。リンパ球の数を大事にしてるんですね。
糖質制限+プロテインでコルチゾール亢進、交感神経優位に振り切った私は、リンパ球の数字も悪化してたんですが、糖質制限をやめてから数字も戻りました。
今はとにかく、”偏らない食事”を心がけています。
あの、誤解のないように言いますが、糖質制限を全否定してるわけじゃないですよ。筋肉質の男性とか、100キロ越えの肥満の人とかが一時的にやるにはいいと思う。あるいは他にも、体質的に合う人がいるかもしれない。でもそれ以外の人はやっちゃいけないと思う。
私みたいに一年で気付けばいいけど、何年もやってしまったら、糖に弱くなってタンパク質でも血糖値が上がったりするようになって、コントロールできなくなる。引き返せなくなる前に、私の声が届くといいんだけど。

あと、この文脈だからついで言いますが、鉄剤礼賛、あれもどうにかならないですかね。『静注のフェジンは危険だが、鉄剤の経口投与なら過剰はない』って、根拠は何でしょう?いや、皮肉とかではなく、純粋に知りたいです。
治療仲間に、鉄剤とプロテインを必死に飲んで、フェリチン300、BUN20超えたものの症状が全然よくなってない精神疾患の方がいます。そういう人がたくさんいます。『糖は毒』という言説を信じた被害者です。私もその一人でした。断糖して鉄剤飲んで、そこに生クリームまで食べて。私の体は炎症で燃えまくっていたと思います。脂肪肝へ一直線ですね。リウマチが悪化するのも当然のことでした」

名前を伏せるのもかえって不自然なので、はっきり言うと、藤川徳美先生のことである。
フェイスブックの情報発信を通じて、”オーソモレキュラー栄養療法”という名詞を日本人に広めることに貢献した藤川先生の功績は、同じ分野で働く一人として、ありがたく思っている。ただ、拙訳『オーソモレキュラー医学入門』を読んでもらえればわかるが、オーソモレキュラー療法の立役者のホッファーはプロテインや鉄剤の積極的摂取を勧めているわけではない。藤川先生の方法論は、タンパク質とビタミンのメガ用量での摂取という点は三石巌先生の三石理論そのものだが、三石先生は糖分の積極的摂取を勧めていた。「白米、砂糖、塩の”三白”を十分量摂るべき」とさえ言っていた。藤川先生の主張は、ホッファーや三石先生の主張に、似ているようでいて、違う。その違いにこそ、藤川先生の独自色があると思う。だからつまり、”藤川理論”なんだな。
これによって救われた人があることは当然否定しない。ただ、”合わなかった人”の声が、あまりにもないがしろにされているように思う。

「私はリウマチが悪化したことで藤川先生から離れましたが、藤川理論、もったいないと思うんです。どの治療法でもそうでしょうけど、メリットとデメリットがあるものです。
でもデメリットのほうは、先生も信者も、誰も言わない。藤川先生の本を買って自分で取り組んだものの、体に合わなくて、挫折して去っていく。こういう人がどれほど多いことか。誰も得をしていません。提唱者の藤川先生が、事前にはっきり言うべきだと思うんですね。こういうリスクがありますよ、と納得の上で取り組めば、不意打ちみたいに体調が悪化することもなくなります」

藤川先生については、以前『鉄剤の危険性』と題する僕のブログで言及したことがある。フェリチンが高いことを戒める内容で、フェリチン高値をよしとする藤川先生を結果的に批判するような形になった。先生ご自身もこのブログを見られ不快に思われたようで、フェイスブック上で友達だったのが、いつのまにか切られてしまいました(笑)
精神科医としての先輩であり、同時に栄養療法の先輩でもある、こんな先輩は僕にとってほとんど唯一無二で、そういう意味でも藤川先生を強くリスペクトしてるんだけど、僕の片思いに終始している。悲しいなー(泣)

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