人工甘味料と抗生剤

「人工甘味料を食うぐらいなら砂糖食ってる方がマシ」というのは、以前にも何度かお伝えしてきた。

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しかし、なぜなのか?なぜ人工甘味料がダメなのか?
「体に悪いから」というのが結論なんだけど、これだけでは説得力に乏しい。もう少し踏み込んで「なぜ、どのように体に悪いのか」をお伝えしたい。
2日前にこんな論文が出た。
『非栄養性甘味料は接合による遺伝子の水平伝播によって抗菌薬への耐性を促進する』
https://www.nature.com/articles/s41396-021-00909-x
タイトルだけでもおもしろい。抗菌薬によって耐性菌が出現することは広く知られている。しかし人工甘味料を食べて同じことが起こるなんて、思いもしない。具体的に内容を見てみよう。
「抗菌薬に対する耐性菌の出現は人類の健康にとって脅威である。これは、抗菌薬耐性遺伝子(ARGs)を獲得した細菌が他の細菌と”接合”し、それによってプラスミドの水平伝播が行われることによる。こうしてこの耐性が他の菌の間に広まっていく。
人工甘味料(サッカリン、スクラロース、アスパルテーム、アセスルファムカリウム)は安全とされカロリーゼロの甘味料として一般に使われているが、抗生剤の使用による腸内細菌叢の変化と同様の変化を起こす可能性が言われていた。
そこで我々は、サッカリン、スクラロース、アスパルテーム、アセスルファムカリウムが、プラスミドを介した接合伝播を促進することを実際に証明した。人工甘味料に曝露した細菌は、活性酸素種(ROS)の産生を増加させ、SOS応答(細胞周期が停止しDNA修復や遺伝子変異が誘発される状態)が惹起され、遺伝子の水平伝播が行われる。また人工甘味料で処置した細菌は、細胞膜の透過性が有意に増加していた」

「抗菌薬とか薬の類は極力飲まないようにしている」ような健康志向の人でも、人工甘味料を遠慮なく摂取しているとなれば、薬を避ける努力も水の泡、ということです。腸内細菌叢に、抗菌薬を飲んでいるのと同様の変化が現れるだろう。
抗菌薬の効きが悪い患者は確かにいる。こういう場合医者は、糖尿病などで免疫が弱ってる可能性を考えるだろうけど、上記の論文を念頭に置けば「ひょっとして人工甘味料とかよく使いませんか」と患者に一言聞かねばならない。

人工甘味料は、本来市場に出てはいけない物質である。チクロやサッカリンが発癌性のために使用禁止になったように、アスパルテームやスクラロースも市場から撤退しないといけない。しかし、今でも堂々とテレビCMなどで宣伝されている。

1965年サール社の研究員James Schlatterは新たな抗潰瘍薬の開発途中に、アスパラギン酸とフェニルアラニンをエステル結合させた。この化合物(アスパルテーム)の粉末を試験管に移す際、少量の粉をうっかりこぼしてしまった。その日の夜、Schlatterが紙をめくろうとして指をなめたところ、その指に強烈な甘さを感じた。指先に付着していた微量の粉が甘みを持っていることに、彼はこのとき初めて気づいた。ここから人工甘味料としての研究が始まり、1970年に『サイエンス』誌に発表。1973年にはFDAに人工甘味料として承認された。食品添加物としては異例のスピード承認だった。
その健康リスクについて、多くの研究者が警告を発した。アスパルテームの摂取による悪影響として、めまい、頭痛、てんかん、記憶喪失、性格変化、性的不能、脱毛、関節炎、SLE、アルツハイマー病、ライム病、うつ病、慢性疲労症候群、脳腫瘍などが挙げられる。

個人的には、頭痛を訴える人には、人工甘味料をとっているかどうか確認することにしている。
20代の男性が頭痛を主訴に来院された。「数年来の頭痛持ちです。何とか治したくて、ネットで頭痛に効くということは一通り試しましたよ。マグネシウムのサプリがいいとか、ここのツボを押せばいいとか。あと、先生がブログでフィーバーフューのハーブティーがいいと書いていたので、それも試しました。でも、どれもパッとしませんでした。痛いときは本当に地獄です。ロキソニンが手放せません」
食生活はどうですか?
「砂糖は体によくないから、基本避けるようにしています。でも”甘いもの一切なし”ではつらいから、コーラを飲むにしても、ダイエットコークにするなど、一応気は遣っています」

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そう、”体への気遣い”のつもりでやっていることが、逆に体に最も悪いことであったりするのだから恐ろしい。この患者に人工甘味料の危険性を説明し、摂らないように指導したところ、頭痛はすぐに軽快した。

意外なところでは、プロテインにもやばいのがあるよ。

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タンパク質の補給というメリットを、人工甘味料のデメリットが帳消しにしかねない。
せっかくプロテインを飲むのなら、できればグラスフェッドで無添加の、ちょっとお高めのプロテインのほうがいいよ。

以前、ブドウ糖加糖液糖のリスクについて書いたことがあるが、まったく甘みというのは実に厄介だ。人間の味覚は甘いものを快楽に感じるようにできている。このあたりは、グルコースが生存に必須である理由と深く結びついている。その性向につけこんで「甘い毒」を仕込まれると、毒性に気付かずに喜んで食べてしまう。蟻も食わない毒を「おいしい」と感じてしまう人間の舌である。
知識で我が身を守るしかない。

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