グルタミン酸と自閉症6

「サイトカインは炎症につきまとう悪い奴」というイメージかもしれないが、ある種の癌やウイルス性疾患(C型肝炎など)の治療に使われることがある。しかしサイトカイン療法の副作用として、うつ病を発症するリスクがあることは有名である。
『サイトカイン誘発性うつの治療』
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/12401471/
うつ(depression)というか、これまで話してきたことを踏まえれば、自閉症と本質的に違いはない。人と関わるのが億劫になったり、理解力が落ちて人の言っていることが分からなくなったり、感覚過敏(うるさいのや明るいのが苦手)があったり。
「自閉症とうつ病は共通点が多いなぁ」どころではない。成人の急性発症の自閉症を、あえて特に「うつ病」と呼んでいるだけのことである。

癌治療のためであれC型肝炎治療のためであれ、サイトカイン療法で毎日注射を受けている人では、”自閉症様症状”が出現する可能性がある。上記論文では抗うつ薬の併用が有効としているが、副作用を抑えるために別の薬が必要になるような治療(“モグラ叩き”治療)は、そもそも手を出してはいけない。
まず、治療を中止することである。血中サイトカイン濃度が低下し、炎症が鎮まり、脳が自身を修復し始め、精神症状は軽快する。

マクロファージとアメーバ

グリア細胞(微小膠細胞)は休眠状態と活性化状態で挙動がまったく違う。活性化したグリア細胞は、アメーバによく似ている。「似ている」どころか、アメーバ「そのもの」ではないか、と唱える学者もいる。
『アカントアメーバはマクロファージの進化上の先祖である』
https://ecommons.aku.edu/cgi/viewcontent.cgi?referer=&httpsredir=1&article=1015&context=pakistan_fhs_mc_bbs

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ここで脳内の細胞について確認しておこう。
活性化したグリア細胞(≒アメーバ)は一つのところにじっとしていることがなく、脳内をあちこち動き回る。
星状細胞(アストロサイト)の役割は、脳内の恒常性(ホメオスタシス)の維持である。星状細胞には足状の突起があって、この突起がシナプスを覆っている。シナプスに異常がないかどうか常にチェックしている。さらに、星状細胞は各種サイトカインの受容体も備えているし、グルタミン酸の受容体もある。とにかく、あらゆるものをチェックするのが星状細胞の仕事である。
ひとつの星状細胞が、なんと、200万のシナプスをカバーしている。どこかのシナプスに異常が生じれば、すぐに星状細胞が認識する。極めて能率のいい監視システムである。
グリア細胞も同様に、脳内の活動が滞りなく行われているか、あちこちチェックしている。脳へのダメージを与えるものは何であれすべて、グリア細胞をアメーバ状に急速に変化させ、ダメージの修復が開始される。

たとえばインフルエンザにかかるということは、”うつ病”にかかるようなものだ、と言って言えなくもない。頭がぼーっとして思考力が低下し、人と会いたくなくなって引きこもりがちになり、不眠になったり傾眠になったり。こういうのを病気が引き起こす行動ということで、疾病行動(sickness behavior)という。

疾病行動は、適応的である。適応的というのは、”生存のための理にかなっている”ということだ。インフルエンザにかかったときに、頭がシャキッとして人と会いたくなって社交的になる、わけがないでしょう?症状自体が、体を強制的に休ませるように仕向けている。それが生存にとって、結果的にはメリットがあるからだ。
だからインフルエンザにかかっていながら、無理やり解熱薬やらカフェインやらを飲んで仕事に向かうというのは、生理に反している。「しんどいという症状=体の声」だから、会社の声だけではなくて、もう少し体の声も聞くようにしよう。

さらにいうと、実はワクチンを打ったときに起こる反応も疾病行動そのものだ。腕にワクチンを注入して数分以内には、脳を含め全身の免疫系が刺激される。特に脳は重要な器官だから、グリア細胞が強く活性化する。
脳内で炎症の持続する自閉症児が、集中力がなく、社交下手で引きこもりがちになるのは当然のことである。なぜか?脳内は炎症性サイトカインが荒れ狂うやらグルタミン酸が燃え盛るやら、てんてこ舞いなんですよ。まさかこんな状態で、先生の言うことを聞いたり、友達に思いやりを持って接したり、なんてことができるはずがない。自分の生存で手一杯なんだから。読んで字のごとし、”自分のうちに閉じこもらざるを得ない”のが自閉症なんだ。

【参考】
Dr. Russell Blaylock “Vaccines and Immunoexcitotoxicity”

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