牛乳と多動症

11歳男児
オンライン受診。母親が語る。
「先生、こういう人っていますか?
うちの子、牛乳で”酔う”みたいなんです。牛乳が大好きで1日1リットルから1.5リットルは飲みます。でもコロナで学校が休みになって給食で牛乳を飲まず、家でも牛乳のストックが切れて、たまたま1週間ほど牛乳を飲まない時期があったんですね。
それで、この子の変化に気付いたんです。”あ!明らかに大人しくなってる!”って。家族みんながこの子の変化に驚きました。牛乳を飲まなければ、精神状態が落ち着いて大人しくなるし、逆に牛乳を飲めば、酔ったように落ち着かなくなります。
本人も「牛乳を飲むと体が熱くなって頭がふらふらするような感じがする」って言います。
いつも投げやりな感じで、学校に行きたがらないし、行っても授業中に教室を抜け出したりします。でもいじめられてるわけでもないし、保健室登校してるわけでもありません。
クラス全体が荒れてて、うちの子よりもっとひどい子がいたので、それほど注目されていませんでした。担任は他の子で手一杯で、うちの子には「学校の敷地外だけは出るな。どうしても行きたいならどこに行くか言ってから行け」と妥協をされています(笑)担任の先生、それぐらい大変なんです。
性格はネガティブ。友達の一人から「君とは遊ばない」って言われただけで「みんなに嫌われてるから学校に行かない!」ってなる。典型的なマイナス思考です。
そんな性格が、たまたま牛乳を飲まない時期に、一変したんです。冷静沈着、健全な自己肯定感を備えた利発な子供、って感じです。「うちの子はこんなにいい子だったのか」って思いました。「これが本来のこの子で、牛乳がこの子を狂わせていたんだ」と思って、牛乳を買うことをやめました。
でも、牛乳の味が忘れられないんですね。
アル中ならぬ、ミル中って言ってるんですけど、ほら、アルコール依存症の人は隠れて酒を飲むように、この子もこっそり飲んでいます。牛乳そのものを飲むことはなくても、こないだコンビニで午後の紅茶みたいなミルクティーを買ってました。それだけでは飽き足らず、なんと、スーパーで粉ミルクを買っていたのには驚きました(笑)なんでこんなもの買ったの、って聞いたら、どんな味か知りたかったって。
アル中の人が料理酒でも養命酒でも、とにかくアルコールの入ったものを欲しがるように、この子もとにかく乳製品が欲しくて仕方ない。牛乳そのものを買うのはさすがに気が引けるから、せめて乳製品、ミルクの入ったものを、という感じだと思います。
牛乳を飲むと、ふらつく、って言います。ちょうど酒で酩酊してふらつくのと、相似をなしているようです。どうやってもやめられないところも、まったくお酒そのものです。
なんとかお酒を嫌いになる方法がないものでしょうか。
ちなみに既往症としては、喘息があります。2歳で発症して、よくなったり悪くなったりです。何度かICUに入院したこともあって、最後に入院したのは9歳のときです。ただ、今は症状は落ち着いていて、薬は使っていません」

話を聞きながら、症例として非常に興味深いと思った。牛乳に対する遅発型アレルギー(“原因物質への惑溺”)、ミルク・アルカリ症候群、低血糖症、各種栄養不足(ビタミンB群、亜鉛など)あたりが鑑別に浮かぶ。

そもそも牛乳はラクトース(乳糖)含有で甘い。ビタミンやミネラル不足があると血糖値が不安定になって、甘いものへの衝動が増す。さらに牛乳に含まれるタンパク質(カゼイン)が胃で分解されると、カソモルフィンというオピオイド(麻薬様物質)が産生される。みなさんの周りに”チーズ依存症”になっている人はいませんか?チーズはカソモルフィンが多くハマりやすい。”チーズ好き”程度の自覚ながら、実際には”チーズ依存”といったほうが適切な人が案外多いものだ。つまり、牛乳の甘さ(ラクトース)と麻薬(カソモルフィン)が、牛乳への渇望を高めている可能性。

アレルギーといえば、皮膚にぶつぶつができるとか喘息っぽい症状で呼吸がしにくくなるとか、不快な症状が出るイメージかもしれないが、それは急性アレルギーの病態だ。慢性的な遅発型アレルギーは、もっと複雑怪奇というか、妙な症状を呈することがある。恐らくこの男児の腸内では炎症があって、その炎症が脳にも波及して、注意散漫や授業中にじっとしていられないなどのADHD様症状を起こしていると考えられる。しかしその炎症の起因物質を、忌避するどころか、むしろ欲したりする。

あるいは、この男児の精神錯乱をミルク・アルカリ症候群の観点から説明してもいい。ミルク・アルカリ症候群というのは、「牛乳の大量摂取とともにアルカリ(炭酸カルシウム、胃酸抑制薬、骨粗鬆症治療薬など)を同時に摂取したことが原因で、高カルシウム血症を来たすこと」をいう。一般的な症状としては、食欲不振、めまい、頭痛、錯乱、口腔内乾燥がある。症状が長期に続くと、腎不全、代謝性アルカローシスから死に至る。胃薬を飲んでる人が牛乳を飲み過ぎるのは要注意だよ。
この男児の場合、牛乳の大量摂取だけで、特に他に何を同時摂取したわけではないから、要するに「牛乳の大量摂取による高カルシウム血症」である。
意外なところでは、インフルエンザワクチン接種によってミルク・アルカリ症候群が起こりやすくなるし、禁煙補助ガム(ニコレットみたいな)によっても起こりやすくなる。
『H1N1インフルエンザワクチンにより誘導されたミルク・アルカリ症候群』
https://www.sjkdt.org/article.asp?issn=1319-2442;year=2017;volume=28;issue=4;spage=912;epage=915;aulast=Al-Hwiesh
『ニコチン代替ガムが誘因となったミルク・アルカリ症候群~思わぬカルシウム供給源』
https://www.researchgate.net/publication/242653306_Nicotine-Substitute_Gum-Induced_Milk_Alkali_Syndrome_A_Look_at_Unexpected_Sources_of_Calcium

さて、治療はどうすればいいか。
依存性物質への衝動、というのが根本で、これを何とか鎮めてやりたい。ビタミンC、ナイアシンなどの各種ビタミン、亜鉛、クロムなどのミネラルの補給が、その一助になるだろう。
さらに、栄養の改善。「牛乳には多くのビタミンやカルシウムが含まれていて栄養豊富」などと言われているが、単純に嘘である。加熱殺菌のプロセスでビタミンは大半が壊れているし、カルシウムは摂れば摂るほど脱灰(カルシウム流出)を引き起こす。牛乳の大量摂取で弱った胃腸をいたわってあげたい。カルシウムは細胞にとっての、いわば”びっくり剤”である。筋細胞を収縮させ神経細胞を興奮させる。これに拮抗するのがマグネシウムで、マグネシウムのサポート役がケイ素。このあたりを補ってやるといい。マグネシウムのカプセルもいいが、液体のマグネシウムやにがりを薄めて飲むのもいい。
また、病態の根本にアレルギーがあるとすると、アレルギーというのは要するに、炎症である。炎症の鎮火には、有機ゲルマニウム、CBDオイルも勧められる。

「牛乳が骨にいい」というのは、20世紀最大の詐欺の一つである。事実は真逆。骨をもろくする。
ノルウェイは世界一の牛乳消費国であると同時に、世界有数の骨粗鬆症大国だった。そこでノルウェー政府はその原因を徹底的に追求し、ついに突き止めた。「牛乳こそが骨粗鬆症の原因である」これがノルウェー政府の答えだった。これを踏まえ、同国では60歳以上の女性には牛乳の摂取を控えるよう指導が行われている。
『牛乳消費量と股関節骨折のリスク~ノルウェー疫学研究』
https://www.cambridge.org/core/journals/british-journal-of-nutrition/article/milk-drinking-and-risk-of-hip-fracture-the-norwegian-epidemiologic-osteoporosis-studies-norepos/C606985C2EF4EF50F1AA0CCDACF8A13A

外国を見習って「給食における牛乳の廃止」とか実現すれば、日本政府のこと、見直すわ(笑)。でも子供の健康より様々な団体の利益優先で動くのが政治だから、こんなことは期待できない。
牛乳の危険性に自分で気付いて、自分で除去していくしかない。

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