CBDオイルってご存知ですか?
大麻から抽出した成分(CBD=カンナビジオール)のオイルなんだけど、こういうと「大麻だって⁉︎麻薬だ!犯罪だ!」と目の色を変える人がいる^^;
大丈夫。何も心配ありません。
大麻取締法は大麻の「葉っぱがダメ」と言っているだけで、それ以外(種とか茎とか)はダメとは言っていない。実際、大麻はすでに僕らの日常生活で役に立っている。七味唐辛子の七つの味のうち、「麻の実」は大麻の種そのものだし、百均で普通に売ってる麻縄(ジュート)は大麻の茎繊維から作ったものだ。
先週、CBDオイル研究会が主催するオンライン勉強会に参加した。
CBDオイルを臨床で使う先生方の有益な意見が聞けたので、ここにシェアしよう。
「双極性障害にはCBDオイルをぜひ試したい。
精神科の先生ばかりではないので一応確認しておくと、双極性障害にはⅠ型とⅡ型があります。
Ⅰ型はいわゆる躁うつ病ね。気分のアップダウンが激しくて、高いときはすごく元気だけど、低いときはどん底、みたいな人。
一方のⅡ型は、ちょっとテンション高いときがあるけど、だいたいぐずぐずしてるような暗い感じの人。病気というか性格の問題だと思われていたり、あるいは人格障害の診断を受けていたりする。
Ⅱ型にはCBDオイルだけでいけるんじゃないかと、個人的には思っています。
挙児希望の若い女性がいてね、できればバルプロ酸をやめたいという。その人に薬をやめてCBDオイルを出したら、気持ちの安定したまま無事に出産できた。
BPDの人にCBDオイルを使うのもいい。
あ、BPDってわかる?境界型人格障害の人ね。ときどきリストカットしちゃうような若い人に多いんだけど。こういう人もCBDオイルがいい。たくさん飲む必要はない。ほんの数滴飲むだけで、気分の波が静まる人が多い。
精神科医の僕が言うのも何だけど、精神科患者のなかには、精神科にかかったせいで悪化する人が確かにいる。たとえば双極Ⅱ型でパキシルを処方されて悪化する人とか。医者のほうは病気の経過としてそうなっていると思ってるけど、違う。はっきり言うけど、これは薬の副作用だよ。
僕も昔失敗したことがある。もう20年以上前のことだけど、日本で最初にフルボキサミンが出たときに、過食症状のある若い女性に使ったら、不眠になって症状がますます悪化してしまった。慎重に、ごく少量しか使ってないのに、だよ。
なぜこんなことが起こるんだろうと思って、原因を徹底的に調べた。
アメリカにダニエル・エイメンという医者がいて、彼は脳のSPECT検査によって、患者に合った治療法を提示している。彼は不安/うつを7種類に分類していて、そのなかに側頭葉型というのがある。僕がフルボキサミンを投与して失敗した患者は、まさにそのタイプだった。
側頭葉といえば、デジャブを伴うてんかんの好発部位として有名だけど、ここは同時に気分や感情の中枢でもある。考えがいろいろ浮かぶとか、人の影響をやたらに受けやすいとか、大体うつっぽいけどちょっとテンション上がるときがあるとか。こういうタイプの人をうつ病だと即断してSSRIを投与すれば、すごく悪化する。でもこういう人には抗てんかん薬がよく効く。そういう分類があることを、エイメンの著書の中に見つけた。
これだ!と思った。
以来、このタイプの患者が来たときは抗うつ薬を使わないようにして、抗てんかん薬を使うようにしたら、人格障害だと思われていた人がかたっぱしから落ち着いた。医者が症状を悪化させていることもあるんだなと、初めて認識したよ。
で、その後、CBDオイルに出会った。衝撃的だった。デパケンでもラミクタでもテグレトールでもいいけど、とにかく抗てんかん薬が持つ作用は、ほとんどすべてCBDオイルで代替できる。つまり、CBDオイルは抗てんかん薬の上位互換。副作用のない抗てんかん薬だと思った。
薬の細かい使い分けってあるでしょ。うつがメインで時々躁が出る人にはテグレトールよりバルプロ酸が効くとか、バルプロ酸に少量の抗精神病薬を入れるといいとか。CBDオイルを知った後では、そういう知識が陳腐化してしまった。CBDオイルの一択。それだけで治ってしまうから。
特に今言ったダニエル・エイメンの分類の側頭葉型の精神症状に対しては、CBDオイルを使わない手はないと思う。このおかげでずいぶんたくさんの患者を助けることができた。
CBDオイルが躁状態にもうつ状態にも効くということは、要するに、気分の波をフラットにしてくれるということだ。女性の場合、気分の波に生理周期がかぶって、生理前とかに精神状態がぐちゃぐちゃになってしまう人がいる。
こういう患者にはCBDオイルに加えてプロゲステロンクリームを併用するといい。デパケンだけ使っても、単にぼーっとするだけでパフォーマンスが上がらないものだからね」
上記は飯塚浩先生の言葉。
僕が臨床でCBDオイルを使い始めたのも、オーソモレキュラー学会でこの先生の講演を聞いたことがきっかけだった。日本で一番多くCBDオイルの臨床例を見てる先生じゃないかな。
CBDオイルが副作用のない抗てんかん薬だとすると、もはや一般的な処方薬を使う理由がなくなる。製薬会社的には実に、”不都合な真実”だ。
CBDオイルに唯一欠点があるとすると、それは値段じゃないかな。うちでは10%CBDオイル30mlを2万2千円で売ってて、他院よりかなり安い方だと思うけど、患者はそんなこと知らない。「そんなちょびっとの量で2万円⁉︎」となって、値段で尻込みしてしまう。
さらに、冒頭にも書いたように、「大麻!」というだけでビビってしまう人もいる。
これは違法薬物の危険性を知らしめたマスコミの功罪で、多くの人の頭の中で、大麻=麻薬=「人間やめますか?」みたいな公式ができあがっているんだと思う。そのせいでCBDオイルがどれほど有効かを説明しても、納得してくれない。
医療用大麻は(あるいはレクリエーションとしての大麻さえ)、解禁の方向に進んでいるのが世界的な潮流だけど、日本での解禁はまだまだ遠い未来になりそうだ。