臨床CBDオイル研究会の症例検討会で、印象に残ったやりとりを記録しておこう。今回は主に、CBDオイルと皮膚疾患(かゆみ、脱毛、皮膚癌)について。
「CBDオイルはかゆみにも効くということで、患部への塗布を勧めたところ、むしろかゆみが悪化したことがあります。寝れないほどのかゆみということで、CBDオイル内服により眠りは改善しましたが、肝心のかゆみについてはCBDオイル塗布しても治らないといいます。どうすればいいでしょう」
「CBDオイルを肌に直接塗る際は、濃度には重々気をつけて。たとえばCBDオイルは脱毛の人にも効くと言われていますが、そのまま濃いのを塗るとむしろ抜ける可能性があると新垣先生が報告しています。皮膚は濃度が薄くても充分効く。たとえばCBDオイルを飲むのを嫌がる小児に対して、経皮吸収を期待して足の裏に塗布する、といった場合なら原液をそのまま塗ることはあり得るけど、症状の改善を期待して患部に塗布するときは気を付けて」
「頭皮にステロイドを長く塗ったせいで、そこだけ毛が生えなくなった人がいるんですが、そういう症例にCBDオイルは効きますか。なお、使っていたステロイド剤はstrongestのデルモベートです」
「CBDオイルは”副作用のないステロイド”と言われます。ステロイドは短期的には有効な薬ですが、長期使用により様々な副作用が生じます。その点、CBDオイルは副作用のなさが売りで、安心して使えます。なぜ、CBDオイルがステロイドの代替物となり得るのか。もともとステロイド剤が効くような人は、内因性カンナビノイドが欠乏している可能性がある、というのがひとつの説明です。
さて、ステロイド剤の慢性投与による脱毛に効くか、ということですが、これはお答えが難しいところです。効くと断定はできませんが、効く可能性がある、とは言えるかと思います。
CBDオイルには血流改善作用があります。CBDオイルが痛みに効くのはそれが理由です。では、痛みとは何か?漢方的には瘀血とか冷えとか腎虚とかいろんな背景があり得るけど、痛みに効くというのは、もう要するに、全部に効いている。循環がよくなれば、たいていの不調は改善するものです。
あと、抜け毛の人は交感神経優位で、緊張して体に力が入っていることが多い。そういう意味では、局所への塗布よりも内服によりリラックスさせることが、間接的なようでいて有効かもしれません」
「内因性カンナビノイドは毛の成長を阻害するという報告を読んだことがあるのですが、どうでしょうか」
「ソースは?」
「CBDオイルの研究発表ではなく、人の発毛機序に関する研究でそういう報告がありました」
「なるほど。これは濃度次第ですね。発毛を抑制する濃度と促進する濃度があります。高濃度にさらすと発毛を阻害する可能性はあります。逆に薄い濃度だと発毛を促進する論文も、確かにあります。具体的には0.9%。100gの基材に90㎎のCBDオイルを混ぜて0.9%ですが、それぐらいなら発毛剤として作用するはずです」
「癌に対してはどうでしょう?」
「これはCBDオイルでは難しいところです。欧米の報告では、CBDだけでは不十分で、ぜひともTHCが欲しいところです。THCが入るとアントラージュ効果が高まり、癌に対する効果も増します。特に皮膚癌、悪性黒色腫にはてきめんに効きます。日本ではTHCの使用が禁止されているのが残念なところです。
もっとも、CBDも癌に対して効かないわけではありません。、CB1受容体、CB2受容体に間接的に作用することで抗腫瘍効果はあります。ただ、全身転移を伴うような末期の人では、癌そのものへの効果はわかりにくいでしょう。もちろん、癌性疼痛にはよく効きます。不安感やいらいらにも効きます。しかしCBDオイルだけで癌と戦うというのは難しいです」
「私、獣医なのですが、CBDオイルが癌に劇的に効いた経験があります。症例を供覧してよろしいでしょうか。
【症例】猫 雑種 21歳 避妊メス 体重5.3kg
猫で21歳というのは、人間でいうと百歳くらいの超高齢です。この猫ちゃん、既往歴は以下のようです。
【既往歴】糖尿病治療中(注射にて) 腎不全(分類レベルⅡ期)
糖尿があって腎臓も悪い猫ちゃんだったんですが、4年ほど前に右の後ろ足の肉球部分に妙なおできができた。それで病院で病理検査を受けて、非上皮性悪性腫瘍の診断を受けました。
最初は飼い主さん、放っておいたんですが、だんだん大きくなって3cmにもなりました。高齢なので手術は負担だろうと思って、レーザー、エタノール注入、オゾン化クリームなどの局所治療をしたり、マイヤーズカクテル点滴とかビタミンC点滴とか、まぁできることは一通りされていました。
でも腫瘍の大きさは一進一退という感じで、2年前には患部が自壊したり、化膿するようになってきました。そういうときに、うちに来られました。
末期だろうから、せめて痛みをとってあげたいと思って、CBDオイル(2%ブロードスペクトラム)を勧めました。量は1滴から。猫は犬よりもよく効くので、まずは微量から。段々ふやして、1回5,6滴を1日2回、フードに混ぜてとらせるように指示しました。
で、私もこの猫ちゃんのこと、しばらく忘れてたんですね。一か月後、また来院されて、飼い主さん「すごくいいです。癌が治ってきてるみたいです」確かに、自壊していた壊死組織が、ずいぶんきれいになってる。それで写真を撮り始めました。2か月3か月経って癌がみるみる小さくなって、1年後にはすっかりきれいになりました。
同時に採血もしていたんですが、CBDオイルの投与前と後とでは、リンパ球分画がだんだんよくなりました。
この猫ちゃんは、結局24歳で亡くなりました。最後、腫瘍の部分が少し腫れていましたが、癌の進行は最後まで見られませんでした。皮膚癌が進行すれば、壊死組織が腐臭を放ち始めたり骨が見えてきたり、もっとmiserableな経過もあり得るのですが、全然そんなことはありませんでした」
「動物へのCBDオイルといえば、分離不安にも効きます。飼い主と離れて、家でひとり取り残されるストレスで、自傷したりする犬。クロミカルムを投与されることが多いけど、これってSSRI(抗うつ薬)ですからね。愛犬に精神科的投薬をすることに躊躇する飼い主さんもいると思います。あと高齢の動物に多いのが、認知症。徘徊が始まって飼い主に噛みつくようになった犬にCBDオイルを与えたら穏やかになった、という話はよく聞きます」
“副作用のない○○”、という表現をときどき耳にする。たとえばセントジョンズワートは、その抗うつ作用から”副作用のないジプレキサ”と称賛されたりする。誰が言ったか、CBDオイルを”副作用のないステロイド”と呼ぶのは言い得て妙だね。
これにならって言えば、CBDオイルは、痛みに効くことから”副作用のないリリカ”だし、脱毛症への効果から”副作用のないミノキシジル”だとも言える。
とにかくCBDオイルがすばらしいのは、副作用のなさ。僕ら医者は医学部で”薬はリスク”と習う。欲しいものは、タダでは手に入らないのだと。主作用を得るためには、副作用のリスクを冒さざるを得ないのだと。
しかしCBDオイルは、実に都合のいいことに、ほぼ”ノーリスクハイリターン”で僕らの要求に応えてくれる。現状、CBDオイルでネックなのは、値段だろう。この点についても、飯塚先生がこんなことを言っていた。
「CBDオイルはすばらしい効果があるけど、どうしても値段のせいで躊躇する人がいる。でも、恐らく10年後にはCBDオイルは半額になってるんじゃないかな。規制のせいで高くなってるわけだから、規制がなくなれば安くなる。大麻は産業的に極めて有用な植物。クリーンなバイオエネルギーになるし、セルロースや木質は建材にもなるし、種は食品にもなる。どこの気候でも簡単に育つし、農薬も肥料もいらない。こんな便利なものはない。規制さえなくなれば、値段が下がって、CBDオイルもみんなに行き届きやすくなる。そうして、日本人みんなが幸せになるといい。それが僕のビジョンです」